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東京都足立区 村山・横川バレエスクールのブログです。

生きた時間

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現代社会に生きる私たちは大変忙しく、ストレスが多い時代に生活しています。小さな子供だって同じこと。彼らもスケジュールに追われています。

どころで、時間の概念には「ニュートン時間」と呼ばれるものがあります。これは時計で計ることのできるような一般的な時間の流れのことで、近代物理学者の始祖にちなんで名づけられています。一方で、「ベルクソン時間」という概念もあります。

これは”人々がどう生きるか”で計られる心理的時間とも呼ぶべきもので、フランス哲学者の名がつけられています。

ダンスクラシックを学ぶ人、舞台に立つ皆さんにとって、どのように時間を有効活用し、目的達成のためにどう時間を持つべきなのかが問われます。

たとえば、舞台に向けて夜遅くまでリハーサルをする場合、だらだらと時間を費やせば身体は疲れ果て、親からは「学校が第一、その上での習い事でしょう!」などと余計なことを言われるかもしれません。レッスン前に親とケンカしたり、学校であったいやなことを引きずったりしてレッスンに臨めば、集中力を欠いた無駄な時間を過ごすことになる。そうならない為に何が必要なのでしょう?

リハーサルのスタート時から本番までの定められた日程の中で、1つの踊りの完成に向けた時間管理が大事になってきます。上達度に応じて、いつまでにこれをマスターしなければならないという切迫度や、その課題の重要度などを総合的に判断して、より具体的な指標となり得るような時間管理です。

“今なすべきこと”を明確にして時間を作り、より集中して濃密な時間を過ごさなくてばなりません。

物理的なニュートンの時間は人々に平等に与えられています。ただし、その時間か漫然と流れていく時間に過ぎなければ、それは生きた時間とは言えず、死んだ時間も同然です。

このことは舞台に限らず通常のクラスにおいても、あるいは学校においても、さらには大人の社会においても同様なのです。できるだけ早いうちから、この生きた時間を過ごすという意識を持ってほしいと思っています。

それがベルクソンの心理的時間であり、この時間の捉え方を実行することが人生を豊かにし、成功の源となって自己実現の道に皆さんを導いてくれるのだと言えます。学ぶ人も教える人も、ともにこの時間を共有し、これからの長い人生の糧になるよう過ごして下さい。

教師という者は、あなたが挫けずについてゆけば、師として尊敬に値する言動や道を示してくれるものです。教師は生徒の素質ややる気を見抜くし、あなたがなぜ理解できないのか、スムーズに体重移動ができないのか、重力に逆らえないのかなど、個々の問題に対して適切で前向きなアドバイスを与えてくれます。それは結局、あなだがどう時間を過ごすかにかかっているのです。

生きた時間は、じつは入選したり、完成したりした瞬間というよりも、むしろそこに至るまでのプロセスにこそあるのです。

もう一度言います。生きた時間を大切にして下さい。なぜならばそれは、バレエを通してあなたの人生を豊かにしてくれるものだからです。死んだ時間を過ごしていけません。そこには未来への扉はないのですから。

安達哲治

元NBAバレエ団芸術監督
京都バレエ専門学校教授

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